行き止まりでこの先にはもう何もない、という僕と 何もないからこそ、未来を、希望を感じられるという奴、浩介。 沈んでいるヨットを引き上げ、自分たちの手で再生して、何処か知らない場所に行こう。 そんなあまりに突拍子もない話だからこそ、あの日、僕はおもわず頷いたのだ。 水面下で、ユラユラと幻想的に揺れる真っ白な船体(ハル)。 それこそが、まだ見ぬ僕らの船だった── 神奈川県横浜市鶴見区に広がる工業地帯。 意味などない、ただの行き止まりの、詰まったクソみたいな場所。 誰も来ないはずのこの場所でぼんやりと海を眺めていた進は、偶然、この場所に訪れた東上浩介と出会う。浩介はつまらなそうにしている進に話しかけ、水没したヨットの再生計画をもちかける。 「沈んでいるヨットを引き上げ、自分たちの手で再生して、何処か知らない場所に行きたい。」 そんなあまりに突拍子もない話をする浩介に惹かれ、進もヨットの修理を手伝