■前編はこちらから ──それでは、今年のサブカルチャーの各ジャンルからベスト作品、気になった作品、ワースト作品などを挙げていただければと思います。 宇野常寛(以下、宇野) 映画からいきましょうか。去年の代表作が『ダークナイト』、『ノーカントリー』だとするなら、今年の映画でその2作に相当するのは『レスラー』と『グラン・トリノ』になると思うのですが、僕は圧倒的に去年の2作を推します。今年の2作はもちろん完成度は高いし、良い映画であることは間違いありません。ただ、明らかにどちらもおじさんの自己憐憫映画になっているという点で甘くなっています。国内ではイデオロギー的に共感するという理由で、すごく党派的、盲目的に褒められているように感じますね。 同じイーストウッドものだったら『チェンジリング』のほうが完成度は高いわけですし。『ダークナイト』『ノーカントリー』的行き詰まりと『グラン・トリノ』『レスラー』