結婚して間もない頃、米国の留学生寮に1年近くすんでいたことがある。主にアジア太平洋地域の各国から来た留学生や、米国の遠くの州から来た若者が一緒にすみ、キッチンは共同だった。独身者と、子どものいないカップルが10数組ずつ、キッチンをシェアする。お互い顔見知りになるから、ときどき招待し合って一緒に食事したり、あるいは学期試験の終わったころにはキッチン全員が持ち寄りパーティを開いたりする。そういうときには、近くの同じスーパーから食材を買ってきているはずなのに、ものすごくバラエティの大きな各国料理がそろい、楽しかった。 仲間の中には、パキスタンからきたイスラム教徒、インドやネパールのヒンズー教徒、タイやスリランカの上座部仏教徒もいる。だから、お互いの食物のルールなどにも気を遣いながら、一緒につくったり食べたりした。ヒンズー教徒の夫婦は厳格な菜食主義で、鰹節のだし汁も使えない。だから昆布でだしを取っ