現在、台湾領である金門島は、厦門の海岸から肉眼で見えるほど近くにある。国境接岸船に乗ること約1時間。あいにく海上には霧が立ちこめてきたが、それでも、はっきりと島の姿を望むことができた。 島の正面には、中国大陸側に向かって「三民主義、中国統一!」の赤字が躍る看板が挑戦的に立っている。乗客が窓際に押し寄せて船が傾いた。こちらの船に乗っているのは、ほとんどが中国人である。見えない国境線を目の前にして、彼らは何を思っているのか……私の緊張まで高まっていたところ、我も我もと、金門島をバックにピースサインで写真を撮りだした。私も「俺を撮ってくれ!」と見知らぬ中国人に頼まれ、「イー、アール、サン」のかけ声とともにパシャッ!とシャッターを押した。おしなべて中国人は記念撮影が大好きなのは知っていたが、こんなところでも発揮されるとは……。 10分ほど停泊してから船はUターンした。国境線までは行けるが、さすがに