葛飾北斎の代表作である『北斎漫画』は、人物や動物、植物、建物、風景など、ありとあらゆる題材が描かれた絵本です。例えば、こちらは笠をかぶって踊る男性の動作を捉えたもの。一つ一つ切り取って順番に並べれば、パラパラ漫画のように踊り出しそうです。 あるいは顔を引っ張ったり、紐や箸を使ったりして、変顔をする男性たち。右上の男性はちょっとキメ顔なのが笑えます。 清水勲氏は、コマ表現や吹き出し、キャラクター設定などから、『北斎漫画』を現代のマンガの原点に位置付けていますが(註1)、現在の私たちが親しんでいる「マンガ」、特にコマの連続によって物語が描かれるストーリー漫画の要素は『北斎漫画』にはなく、現代の「マンガ」とは完全に別物であると言えるでしょう。 註1:清水勲『北斎漫画 日本マンガの原点』(平凡社新書743)、平凡社、2014年。 では、『北斎漫画』の「漫画」は、どのような意味で使われているのでしょ