現在、TPP交渉の一環として日米間の通商交渉が行われている。TPPに関する報道などの中で、最近、TPA(Trade Promotion Authority、貿易促進権限。旧称は「ファストトラック」)という一見まぎらわしい言葉が散見されるようになった。ただ、その重要性に関わらず、TPAについて正面から取り上げた記述は日本国内では少ないように思われる。 そこで、このレポートでは、TPAに焦点を当てながら、歴史的考察も含めて、アメリカ大統領の通商交渉に対する交渉権限について概観するとともに、TPAを巡る動きがTPP交渉に及ぼす影響について考えることにしたい(注1)。 TPAとは、アメリカ議会が法律によって大統領に付与する通商交渉に関する交渉権限である(注2)。アメリカの憲法では、外国との通商に関する取り決めを定めるのは議会だとされている。また、関税も含めた税金をどうするかを決めるのも議会の役割と
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