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ブックマーク / kasasora.hatenablog.com (5)

  • セフレですよ、不倫ですよ、ねえ、最低でしょ - 傘をひらいて、空を

    仕事の都合で別の業種の女性と幾度か会った。弊社の人間が、と彼女は言った。弊社の人間が幾人かマキノさんをお呼びしたいというので、飲み会にいらしてください。 私は出かけていった。私は知らない人にかこまれるのが嫌いではない。知らない人は意味のわからないことをするのでその意味を考えると少し楽しいし、「世の中にはいろいろな人がいる」と思うとなんだか安心する。たいていはその場かぎりだから気も楽だし。 彼らは声と身振りが大きく、話しぶりが流暢で、たいそう親しい者同士みたいな雰囲気を醸し出していた。私を連れてきた女性はあっというまにその場にすっぽりはまりこんだ。私は感心した。彼女は私とふたりのときには同僚たちに対していささかの冷淡さを感じさせる話しかたをしていた。 どちらがほんとうということもあるまい。さっとなじんで、ぱっと出る。そういうことができるのである。人に向ける顔にバリエーションがあるのだ。私は自

    セフレですよ、不倫ですよ、ねえ、最低でしょ - 傘をひらいて、空を
    atashi9
    atashi9 2019/09/19
    5のアサ多い人間関係と動物っぽい感じ、変な支配関係の振り回しよく書けてると思った。酒も多いのか。 これが本筋と思われてるのが嫌だ。
  • あなたに合わせた壊れかた - 傘をひらいて、空を

    友人とその夫が改札前に立つ私を見つける。私は友人を見る。息をのむ。もともと小さく華奢で、けれどもこんな、頬骨が透けてみえる人ではなかった。ぼんやりしてほほえんで青白くって幽霊みたいだった。私は少しかがんで彼女と目をあわせ、久しぶり、と言った。そうねと彼女はこたえた。彼女の夫が目配せをして私たちに背を向け、ふたたびホームに降りていく。歩けると訊くと電車に乗ってきたのにとこたえて可笑しそうに笑った。そんなはずはないのに、笑うと罅が入るような、目の前でぱりんと割れそうな気がした。彼女の大きいかばんに手を遣り、持つよ、と言う。彼女は逆らわない。触れた指の冷たさに驚き、反対の手に荷物のすべてをうつして手を取った。彼女のためというより、自分の不安のためだった。 彼女はこれから関西の実家に戻る。少し休むという。さまざまな心身症が出て会社を辞めたばかりで、辞めること自体にも巨大なエネルギーを要し、極度に疲

    あなたに合わせた壊れかた - 傘をひらいて、空を
    atashi9
    atashi9 2014/09/09
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  • かぐや姫は帰らない - 傘をひらいて、空を

    それでどうするのと、結果をほとんどわかっていながら訊く。彼女はあははと笑う。少しも悩んでなんかいなくて、どちらかというとちょっと苛ついている、そういう気配のはりついた、笑い。私はそのこだまとしてあんまり意味のない笑いを笑い、その残響が消えるまで、半開きの口で待つ。私はそういうばかな犬みたいな役割がすごくよく似合うし、そのことをけっこう誇りに思っている。重要ではなく、危険ではなく、半ば空洞のような、よくはずむ会話のための少し気の利いた壁みたいなもの。そういう役回りが必要な場面はけっこうあって、誰も自分がやりたいとは思わないんだろうけれど、やっている側の私にしてみればかなりお得で、やたらと人の話が聞ける。私は人の話を聞くのが好きだ。 メールの返信しないんだから悟ってくれないかなあと彼女は言う。今度の人は何がいけなかったのと私は尋ねる。それを受けて彼女は、何度か事をした相手がいかに唐突な意思表

    かぐや姫は帰らない - 傘をひらいて、空を
    atashi9
    atashi9 2014/07/15
  • 彼らは値札を殺す - 傘をひらいて、空を

    あの子みたいな、なんていうか作ってるの、俺、ダメだな。近くの席から男の声が聞こえた。だいぶ大きい声で、そうでなければ言葉遣いの端々まで聞き取ることはできない程度の距離が空いていた。声は断続的に高まりながらしばらく続いた。可愛らしさを取り繕っている女性について話しつづけているようだった。サメル、ナエル、というような音声が、何度か挟まれた。私と彼女は目を見交わし、彼女の夫は声のするほうをちらりと振りかえって、口の端を上げた。中年になってもこの夫婦の容貌の優れていることに変わりはなく、いけすかなさには拍車がかかったと私は思う。高慢で口さがなく姿勢が良く、いつも磨かれたを履き、生活は意外と地味で規則正しい。 このいけすかない夫がいけすかない若い男といけすかない若い女であったころを私は知っている。そのころの彼らには虚勢の気配があり、緊張感があった。他人をこきおろすからには自らの品質を保たなければ

    彼らは値札を殺す - 傘をひらいて、空を
    atashi9
    atashi9 2014/06/17
    つまんなすぎておもしろい。書いてることがばばあすぎる。新潟すごい!
  • アルコール依存症気味の薔薇 - 傘をひらいて、空を

    華やかで大輪の感じがするので薔薇のような人だと評していたら当の彼に笑って女の子じゃないんだからと言われた。あるいは男同士のラブ的な。彼の説明がわからないのではなかったけれども、私は自分の用法にだって自信を持っていた。単独の成人男性を薔薇のようだと思うのがおかしいなんて、私には思われなかった。彼は束にされればいちばん目立つような能力と容姿を持ちそれを裏切らない言動をとっていた。十年と少し前の話だ。 十年ぶりに会った相手が老けているのは当たり前だけれども、それよりも病的な痩せかたのほうが目についた。槙野さんか、太ったなあ、と彼は言い、太ったよと私はこたえた。いいねと彼は続けた。年をとったら脂肪を増やしたほうがいい、脂気がないと、寒い、皺っぽくなるし、うん、ちょっと太ったほうがきれいだ、太ったって言われて気を悪くしないところも良い。 彼は人を褒めるのがとてもうまい。ものを言って人の気を惹くのがう

    アルコール依存症気味の薔薇 - 傘をひらいて、空を
    atashi9
    atashi9 2014/05/29
    後々こういうの邪魔
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