交流はその後も続き、緊張しながら演奏した少女は26歳になった。「一流の人が同じ目線で寄り添ってくれた」との思いは強い。震災から12年。今年3月に亡くなった偉大な音楽家は、ごく普通の一家に「一生の宝物」を残していた。(共同通信・森清太朗) ▽仮設住宅に「運命」の入居 坂本さんは震災直後から被災地支援に動いていた。建設資金の寄付を呼びかけて、岩手県住田町内に地元木材を活用した木造仮設住宅93戸を建設。津波で甚大な被害を受けた沿岸地域の被災者を受け入れる目的だった。5倍以上の倍率となる中、くじ引きで入居を引き当てたのが菅原綾乃さんの家族だった。 陸前高田市にあった菅原さんの自宅は津波に襲われ全壊。当時13歳だった綾乃さんや父教文さん(58)は無事だったが、同居していた綾乃さんの祖父母が亡くなった。当時12歳だった弟三四郎さんは約2カ月間続いた避難生活になじめず、栄養失調で吐くこともあった。 悲運