軍事史の著作には多かれ少なかれ指揮官としての視点が盛り込まれています。指揮官にとって重要なことは、どの部隊を、いつ、どこで、いかに敵と戦わせるかであり、部隊を構成する兵士に焦点を合わせることは稀です。 しかし、イギリスの歴史学者ジョン・キーガンは『戦場の素顔(The Face of Battle)』で前線で戦う兵士の個人的な経験に価値があると考えました。上空から戦闘を俯瞰するのではなく、兵士の視点で歴史上の戦闘を生き生きと記述したことで、高い評価を受けています。同書においては、1415年のアジャンクールの戦い(百年戦争)、1815年のワーテルローの戦い(ナポレオン戦争)、1916年のソンムの戦い(第一次世界大戦)が取り上げられています。 いずれも研究者が繰り返し取り上げ、分析してきた戦闘ですが、キーガンは戦略や戦術の理論には立ち入りません。その代わりに、最前線に立っていた兵士たちの動きを細
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