「人は忘れる生き物だ」――最後のページを読み終えて本を閉じたとき、真っ先に心に浮かんだ感想がそれだった。 写真集『THE DAYS AFTER――東日本大震災の記憶』は、カメラマンの石川梵氏が2カ月にわたって被災地に滞在し、撮り続けた写真をまとめた写真集だ。東日本大震災に関する写真集は数多く出版されているが、個人の写真集はこれが初となる。 3月11日、都内にいて帰宅難民になった石川氏は、翌朝なんとか自宅にたどり着き、テレビで信じられない光景を見た。津波に襲われる街、逃げ惑う人々、目の前で妻子を流されて泣き叫ぶ男の姿。 「大変なことが起こっている」――驚いた石川氏はすぐに知り合いの編集部に連絡をとり、セスナで被災地の様子を空撮した。この写真集の前半は空から撮った被災地の姿だ。津波で元の姿が消えてしまった町、押し流されてミニカーのように固まっている乗用車、まっすぐ伸びた真ん中だけ完全に水に沈ん