失われた民主主義―メンバーシップからマネージメントへ [著]T・スコッチポル [掲載]2007年10月14日 [評者]小林良彰(慶應大学教授・政治学) ■エリートに管理される社会を問う 米国では、来年秋の大統領選の候補者選びが進み、日本のニュースにもしばしば登場する。しかし、そこで目に付くのは巨大化した政党や利益集団、そして民間からの献金を集めて特定の候補者支援のために支出する政治活動委員会(PAC)である。地元における一人ひとりの市民の自発的政治参加を積み上げることで自分たちのリーダーを選出できた「古き良き時代」ではなくなり、組織的に巨額な選挙資金を集めて、候補者のテレビCMを流すことが大統領への道になっている。 その原因として、フランスの思想家トクヴィルが述べたように、「一般に平等が進むと各市民が個人的に弱くなり、相互の糸が失われて皆が孤立する」ため、大きな資金を背景にした全国規模の組