特筆すべきは、この本は「シリーズ・臨床心理学研究の最前線 1」として出版されたということだ。すなわち、シリーズ監修の下山晴彦教授の言葉を借りれば、「臨床心理学における良質の博士論文を厳選し、書籍として公表するシリーズ」の第一段として本書は出版されたのである。 では、どういった点が良質なのだろうか。 まず第一にはその目標が挙げられる。同性愛などの従来の研究においては、異常であるという前提から、その原因論を調査するといったものが主体であった。しかし、本研究では、同性愛者をいかにサポートするという視点から、同性愛者がどのような世界を生きているかを示し、他者からの拒絶と受容と、自尊感情との関係を分析している。 次にその研究の方法論である。従来の心理学研究にありがちな、エビデンスの乏しい、教義や理論の独りよがり的な主張ではなく、あくまでも具体的なデータを集積することで、その研究を行っている。その収集