松本さんの記事にある藤原正彦氏のような議論は、学問の世界では問題になりませんが、彼の本がベストセラーになったことでもわかるように、床屋政談では主流派です。政治の世界でも「市場原理主義」を批判する通俗的な議論が与野党を問わず多く、経済学者の意見はほとんど影響力がない。オバマ政権の主要な経済閣僚が、経済学者で占められたのと対照的です。 この責任は、経済学者にもあると思います。日本の経済学界ではマルクス経済学の影響が強かったため、「近代経済学」の最初の世代は、アメリカから輸入した数学的モデルの華麗さでマル経を圧倒する戦術をとりました。これは成功を収めたのですが、その弊害として理論偏重のバイアスが残り、「経済学はアメリカの輸入品で役に立たない」という批判を浴びる原因になりました。このため昔の経済学しか知らない世代の政治家やジャーナリストは、経済理論を「机上の空論」として無視し、経験主義に頼る傾向が