夫婦が離婚した後、子どもの親権を「共同親権」とする制度が導入される方向で、法制審議会(法相の諮問機関)の議論が進んでいる。離婚後も父母双方が子育てに関われるといった理由から法制化を求める声が強いが、ドメスティックバイオレンス(DV)の被害者らは「子どもの安全が守れない」と大きな危惧を示している。 共同親権の導入は「世界の潮流」と表現されることも多いが、必ずしもそう言い切れない。面会交流中に子どもが殺害される事件があったオーストラリアでは最近、 子どもの安全を重視し、同居親の判断を重視する法改正がなされた。 同様の事件は日本でも起きている。2017年、兵庫県伊丹市で、妻へのDVが原因で離婚した元夫が、面会交流中に娘を殺害し、自らも命を絶った。共同親権が日本で導入されれば「同様の事件が起きるのでは」と懸念する声が上がるが、法制審議会では「特殊な個別事例」としてこの事件のことは議論されていない。