■眠っているのに休めていないわけ 「睡眠負債」(sleep debt)とは、慢性的に睡眠時間が足りないことで簡単には解決しない深刻なマイナス要因が積み重なっていく状態だ。金銭的な負債と同じで、容易に返すことができなくなるという意味をこめてスタンフォード大睡眠研究所の創設者が提唱した。この概念によると、普段の寝不足を「寝だめ」で解消しようとする生活が脳や体にダメージを与え、がんや認知症といった疾患のリスクを高める。普段のパフォーマンスも悪くなり、寿命も短くなる恐れがあるという。 かつて、健康な8人を14時間無理やりベッドに入れて寝かせる実験があった。実験以前は毎日平均7.5時間寝ていたという8人は、初日は13時間、翌日も13時間眠ったが、その後、次第に起きている時間が長くなっていき、3週間後にやっと平均8.2時間に落ち着いた。ここで注目すべきなのは、生理的に必要な睡眠時間と思われる8.2時間
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