■はじまりの物語■ 本を、読む。 この本好きだな、と特別心に残る本のあとがきに、決まって同じ編集者への謝辞がある、そんな経験はありますか? まるで、次に自分が何を読むかわかっているように、「その人」は私を待ち構えている。 もう逃げられない! ジュンク堂の店員から、そんな通報がありました。 「その人」の名は、松家仁之(まついえ まさし)。 新潮社で書籍も雑誌も手がけてきた、名編集者。今は雑誌「考える人」と「芸術新潮」の編集長を務めている。 通報主である店員の本棚から、松家さんが編集を担当した本をご紹介すると― ―編集者になるような人は、若い頃の読書経験から大きな影響を受けていると思います。 学生時代の読書で、編集者の存在を感じるような体験って、ありましたか? 高校生のころから晶文社の本が好きでした。 晶文社の本の向こう側には、小野二郎さんや津野海太郎さんなど、編集者の姿が