⒈ 人工知能にまつわる物語 人工知能を搭載したロボットが、人間に代わってあらゆる仕事を行う時代を想像すると、一つの不吉な疑問が浮上する。 そのような社会で、我々は朝目覚めてから夜寝るまで、いったい何をして過ごすのだろうか? そんな疑問を抱いたのは、先日、アメリカの首都に本拠地を置く研究機関の呼びかけに応じて、国際会議の一種に参加した時だ。 国籍が異なる25人の男女が一都市に集まり、ホテルの会議室の円卓を囲んで着席する。25人は、普段は官僚、経営者、大学教授、医師、技術者などとして、それぞれ異なる分野の仕事に従事するが、筆者を含め、誰一人として人工知能の専門家ではなく、また、経済学や雇用政策に精通している者もいない。それなのに、4日間にわたる会議で熱心に論じられたのは、人工知能の進化と労働の未来、というテーマだったからだ。 その道の専門家が、日々切迫した論を交わしているに違いない問題について