JINSEI STORIES 自主隔離日記「SOSの電話をかけてきた息子と向き合う」 Posted on 2020/10/18 辻 仁成 作家 パリ 某月某日、夕食でも食べようかな、と思ってキッチンにいたら、不意に携帯が鳴りだした。誰からだろうと覗くと息子からだった。 これは本当に珍しいことだった。 親友のアンナの母校の先生が18歳のテロリストに首を切り落とされた事件、だんだんわかってきたことがあり、胸を痛めていた。 先生はアンナの家からすぐ目と鼻の先の路上で殺されたのだ。 ショックを受けているだろう息子からの、これはいわばSOSの電話であろう。 頼られたことは嬉しかったが、どう、彼と向き合うべきか悩みながら、携帯を掴んだ。 「お前が今しなければならないことは、彼女らの心の支えになることだよ」 「うん」 「そのためには君が誰よりもしっかりとしなきゃだめだ。わかるかい」 「うん」 返事なんか
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