オランダには、いまも日本人から受けた心の傷みに苦しむ人たちがいる。80年前の1942年、植民地支配していたインドネシアで日本軍の侵攻にあい、抑留所に収容された7万人あまりの女性と子供たちだ。食料や薬の不足、そして日本兵による暴力。そんなトラウマを持つ存命者の1人が、ティネケ・ファンデル・ウーデ・ズルヴァー(96)だ。インドネシアに侵攻した元日本兵の父を持つ私は、オランダに彼女を訪ねた。ティネケが語った憎しみを癒やすためにできることとは(敬称略)。 【元日本兵の父が語ったインドネシアでの戦争】 私の父、小西繁男がインドネシアでの戦争体験を初めて語り始めたのは、80歳になってからだ。 父が軍隊に召集されたのは、大学生の時だった。自由な学生生活を満喫していたが、1年半の厳しい軍事教練と精神教育を終えると、「我々が戦場で死んでも、忠孝という精神に安心立命を見出すことのできる日本人は、実に幸いにして