「自分らしさ」という万能薬――20年以上信奉される理由とは？（磯野 真穂） @gendai_biz

〈本当の自分〉はひとつじゃない!? 小説家・平野啓一郎さんの10万部ベストセラー『私とは何か』で多くの人が知ることになった「分人主義」。これは、対人関係ごとの自分すべてを「本当の自分」と考える人間像のモデルです。 そもそも「自分」とは何か？ よく言われる「自分らしさ」とは何か？ 平野さんとも対談経験があり、話題の新書『他者と生きる』でも分人主義に言及されている、人類学者の磯野真穂さんが「自分らしさ」について考察します。 虫刺されから、腹痛、頭痛。癌や認知症にまで効果を発揮する。そのような薬があると言われたら、皆さんはどう思うだろう？ 全部に効くということは全部に効かないことだ。そんな怪しい薬を誰が信じるの？ そう一蹴しないだろうか。 ところが私たちは、ある万能薬を20年以上にわたり信奉し続けている。 それが「自分らしさ」だ。