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論の周辺:危機にひんする蔵書文化 | 毎日新聞
人は生涯の中で多かれ少なかれ本というものを購入し、いつしか「蔵書」を形作っていく。その数が増える... 人は生涯の中で多かれ少なかれ本というものを購入し、いつしか「蔵書」を形作っていく。その数が増えるとスペース確保に四苦八苦するのは、日本の住宅事情からいってやむを得ない。しかし、そもそも電子出版が進めば、従来の蔵書という観念自体が成り立つのだろうか。 そんな思いを抱いたのは、紀田順一郎さんの著書『蔵書一代』(松籟社)を読んだからだ。書誌学、メディア論の泰斗として数多くの業績を残してきた著者は2年前、約3万冊に及ぶ蔵書を処分した。古書市場に引き渡したのだ。紀田さんほどの著作家の蔵書ならば深みがあり、学術的価値も高かったに違いないのに、なぜ図書館や文学館といった、しかるべき機関に引き取られなかったのか。その事情を痛恨の思いとともにつづり、近代日本の出版史、出版文化を考察したのがこの本だ。 「日本人の蔵書が西欧の蔵書家に比すると平均的にスケールが小さく、蔵書としての総体を維持し難いような印象を受け
2017/08/09 リンク