特集ワイド：五輪の夏・考／4 円谷さんの死、無駄にしない＝福田智沙 | 毎日新聞

建築家の隈研吾氏が設計した新しい国立競技場が嫌いなわけではないが、本音を言えば、建て替えるより旧国立競技場のリニューアルをしてほしかった。今春まで運動部にいた私は旧国立へよく行った。そして、歴史を積み重ねてきたあの空間の荘厳な雰囲気がとても好きだったのだ。旧国立に聖火がともる中、マラソン選手がゴールテープを切ったらどんなに映えたことか。マラソンは今も昔も五輪の華。真夏の夜、私は脳内でそんな妄想を育てる。 旧国立が発着点となった1991年の世界陸上の男子マラソンでは、谷口浩美さんが優勝している。その谷口さんが走った翌年のバルセロナ五輪のことはよく覚えている。マラソンの過酷さを知りながら肉体と精神の限界に挑戦する谷口さんらランナーの姿は、子供ごころに印象に残り、美しさを覚えたのである。