名著を探訪：戦後76年 吉田満『戦艦大和ノ最期』／6 「手首斬り」真相は | 毎日新聞

白波を立てて航行する戦艦「大和」。「世界最大・最強」とうたわれたが、期待された戦果を上げないまま1945年4月7日、米軍機により撃沈された＝高知県・宿毛沖で41年10月20日撮影 吉田満は、戦艦「大和」の沖縄水上特攻から生還した。敗戦直後にその体験を書いた『戦艦大和ノ最期』（『最期』）は、連合国軍総司令部（GHQ）の妨害にあった。占領下の1949年に初版が刊行されたが、吉田の本意の内容ではなかった。占領が終わった52年、ようやく意図の通りに発刊された。この版では重要な描写が加えられた。前回見た、「手首斬り」だ。 「大和」以下10隻の特攻艦隊は、沖縄に上陸した米軍を撃破すべく出撃し東シナ海を南下したが、4月7日、米軍機の空襲により「大和」など6隻が撃沈され作戦は中止となった。生き残った駆逐艦4隻のうち、「初霜」はもっとも被害が少なかった。