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岡本綺堂 中国怪奇小説集 捜神後記(六朝)
第二の男は語る。 「次へ出まして、わたくしは『捜神後記』のお話をいたします。これは標題の示す通り、... 第二の男は語る。 「次へ出まして、わたくしは『捜神後記』のお話をいたします。これは標題の示す通り、かの『捜神記』の後編ともいうべきもので、昔から東晋(とうしん)の陶淵明(とうえんめい)先生の撰ということになって居りますが、その作者については種々の議論がありまして、『捜神記』の干宝よりも、この陶淵明は更に一層疑わしいといわれて居ります。しかしそれが偽作であるにもせよ、無いにもせよ、その内容は『捜神記』に劣らないものでありまして、『後記』と銘を打つだけの価値はあるように思われます。これも『捜神記』に伴って、早く我が国に輸入されまして、わが文学上に直接間接の影響をあたうること多大であったのは、次の話をお聴きくだされば、大抵お判りになるだろうかと思います」 中宿(ちゅうしゅく)県に貞女峡(ていじょこう)というのがある。峡の西岸の水ぎわに石があって、その形が女のように見えるので、その石を貞女と呼び慣