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ブックマーク / blog.tatsuru.com (39)

  • 情報と情報化 - 内田樹の研究室

    前にラジオでおしゃべりしているときに養老孟司先生から「情報」と「情報化」というのはまるで違うことだと教えていただいたことがある。 情報化というのは「なまもの」をパッケージして、それを情報にする作業のことである。 例えば、獣を殺して、皮を剥いで、肉をスライスするまでの作業が「情報化」だとすると、トレーに載せられて値札を貼られて陳列されたものが「情報」である。 「情報」(トレーの上に並べられた肉)を他の「情報」(隣のトレー)と見比べているときに、(こちらが豚肉で100グラム200円、あっちは牛肉で100グラム400円・・・というような比較をしているとき)それが「情報化」されたプロセスのことを私たちは考えない。 情報の差異の検出に夢中になっているとき、私たちはそもそもそれらの情報がどうやって私たちの下に到達したのかという情報化プロセスのことをできるだけ考えないようにしている。 私たちの脳は同一の

  • ショコラ・リパブリック言語論 - 内田樹の研究室

    学校に行く途中、二号線沿いにチョコレート屋の開店の看板が出ていた。 Chocolat Republic 「ショコラ・リパブリック」と読みながら、「変なの」と思った。 「チョコレート共和国」というのを英語で書くなら Chocolate Republic だろうし、フランス語で通すなら République du chocolat とかRépublique chocolatée(あ、これいいな「チョコレートフレイバーの共和国」)であろう。 どうしてこういうデタラメな表記をするのであろう・・・と学者にありがちな定型的な反応をしたあとに、いや待てよと思った。 「こういうデタラメな表記」がすらすらとできるのはもしかすると日人だけではないのか。 ある種の錯誤行為が「すらすらとできる」というのはあるいは能力の一種と言ってもよろしいのではないか。 そう思い至ったのである。 しかし、それは一体どのような能

  • 地球温暖化で何か問題でも? - 内田樹の研究室

    1年生のゼミで「地球温暖化」が取り上げられた。 地球温暖化を防ぐために、京都議定書の規定を守り、急ブレーキ、急発進を自制し、わりばしをやめてマイ箸を使いましょう・・・というような話を聴いているうちに既視感で目の前がくらくらしてきた。 「地球温暖化の原因は二酸化炭素の排出」と学生さんたちはすらすら言うけれど、温暖化と二酸化炭素のあいだの因果関係はまだ科学的には証明されていない。 というと、みんなびっくりする。 気象というのはきわめて複雑な現象である。 「バタフライ効果」という言葉で知られているように、北京で蝶がはばたきをしたことによる大気圧の変化が、カリフォルニアに暴風をもたらすことがある。 複雑系ではわずかな入力差に対して巨大な出力差が生じる。 この場合に「北京の蝶のはばたき」を暴風の「原因」と名づけることには無理があるだろう。 排ガスと温暖化の関係もそれに似ている。 池田清彦さんによると

  • 倍音的エクリチュール - 内田樹の研究室

    京都造形芸術大学のクリエイティヴ・ライティング・コースに呼ばれて特別講演を一席。 こちらのCW(めんどくさいから省略するね)は今年から芸術表現・アートプロデュース学科に出来た新しいコースである。 大学案内には 「大学教育では初めて〈書く〉ことに特化したカリキュラム編成で、作家、ライターを育成するコースです。まず言語力の伸長をめざし、現代日語だけでなく、日の古典や海外の名作を解読・解釈することを通して、言語における創造性と理解力の習得を目指します。より実践を重視し、実際に出版物を刊行します。文芸誌、総合誌の2つのタイプの異なる雑誌を立ち上げ、創作から編集まで、あらゆる方面で学生が参加できる体制を整えます。」 すごいですね。実際に雑誌まで出しちゃうんだ。 専任教員はお一人。アメリカ文学の翻訳で知られる新元良一(にいもと・りょういち)さんである。 CWはうちでも 2006 年度に私がナバちゃ

    f-nyoro
    f-nyoro 2007/06/22
  • 国語教育について - 内田樹の研究室

    大学院のゼミでは国語教育について論じる。 国語力の低下が子どもたちの学力の基盤そのものを損なっていることについては、すでに何度か言及した。 何が原因なのかについては諸説があるが、「言語のとらえかた」そのものに致命的な誤りがあったのではないかというラディカルな吟味も必要だろうと私は思う。 「いいたいこと」がまずあって、それが「媒介」としての「言葉」に載せられる、という言語観が学校教育の場では共有されている。 だが、この基礎的知見そのものは果たして妥当なのか。 構造主義言語学以後(つまり100年前から)、理論的には言語とはそのようなものではないことが知られている。 先行するのは「言葉」であり、「いいたいこと」というのは「言葉」が発されたことの事後的効果として生じる幻想である。 とりあえずそれがアカデミックには「常識」なのだが、教育の現場ではまだぜんぜん「常識」とはされていない。 私が何かを書く

  • 音楽の喜び - 内田樹の研究室

    音楽との対話」で斎藤言子先生とゲストの石黒晶先生と3週間音韻と倍音をテーマにわいわいやった次の週はその石黒先生と総文の渡部充先生のセッションである。 テーマは「沖縄の音楽」。 これは聴かねば、というので4週続けて音楽館ホールに通うことになる。 第一週は石黒先生の作品「三つの沖縄の歌」(1981)から「ションカネ」を聴くところからスタート。 石黒先生が沖縄音楽(厳密には与那国島の音楽)からその創作活動を始めたということを私は寡聞にして知らなかった(どうも私は「寡聞にして知らない」ことが多すぎるようである)。 沖縄音階は「ド・ミ・ファ・ソ・シ・ド」の6音で構成されているのであるが、「シ」の音が「微分音」といって通常の「シ」よりちょっと低いのである。 オキナワン・ブルーノートである。 音韻は母音統合によってoがuに近づき、eがiに近づく3母音構成である。 だから「与那国の情け」は「ゆなぐにぬ 

  • 日本英文学会で柴田元幸さんたちとおしゃべりする (内田樹の研究室)

    英文学会のシンポジウムのために東京まででかける。お題は「アメリカ文化と反復強迫-アメリカ文学の中に書き込まれた(原)風景」。 相方は都甲幸治早稲田大学准教授、大和田俊之慶応義塾大学専任講師という若手お二人と、柴田元幸さん。 以前、DHCのイベントで柴田さんと対談したあとの打ち上げの席で、都甲くんと大和田くんに、「こんどは英文学会に来て下さいよ」言われて、一杯機嫌で「いいよん」と気楽に返事をしたせいで、このようなことになったのである。 大会前に送られてきたレジュメを読むと、どうもみなさんいろいろとむずかしい文学の話をされるようである。 困ったことに、私はアメリカ文学のことなんかろくに知らないし、アメリカ文学の中に分析的な意味でどのような原光景が書き込まれているのか、まるで想像がつかない。 でも、アメリカという国がそのユニークな起源とユニークな歴史の中でどのようなユニークな文化的病像を呈す

  • 音楽との対話 - 内田樹の研究室

    締め切りが迫っているので、日記なんか書いている暇はないのであるが、昨日の「音楽との対話」で心温まる事件があったので、ひとことだけ。 「音楽との対話」というのは、音楽学部の先生と文学部、人間科学部の教師とが何組かペアになって一組が三週にわたり、異文化交流・異種格闘技をする様子を学生さんにご覧いただくという結構の授業である。 よいアイディアである。 私の相方は声楽の斉藤言子先生である。 斉藤先生とは「会議仲間」であって、この二年間たいへん長い時間を会議で共に過ごした。 「会議仲間」というのは「戦友」というか、「ともにまずいものを喰った仲間」というか、「思わず、とんとんと相手の肩を叩きたくなる」関係である。 というわけで、斉藤先生とは仲良しなのである(斉藤先生のご主人が日比谷高校で私のイッコ先輩という奇縁もある)。 私は音楽に限らず人間の発する音韻の選択に興味があり、声楽家の斉藤先生にじっくりと

  • 憲法の話 - 内田樹の研究室

    5月3日は憲法記念日なので、いろいろなところから憲法についてコメントを求められる。 一つは毎日新聞の「水脈」に書いた。 今日の夕刊に掲載されるはずだが、一足お先に公開しておく。 改憲の動きが進んでいる。一部の世論調査では、国民の6割が改憲に賛成だそうである。大学のゼミでも「もうすぐ憲法が改正されるんですよね」とあたかも既成事実であるがごとくに語る学生がいて驚かされた。 九条第二項の政治史的意味についての吟味を抜きにして、「改憲しないと北朝鮮が攻めてきたときに抵抗できない」というような主情的な言葉だけが先行している。 私は改憲護憲の是非よりもむしろ、憲法改定という重大な政治決定が風説と気分に流されて下されようとしている、私たちの時代を覆っている底知れない軽薄さに恐怖を覚える。 改憲とは要すれば一個の政治的決断に過ぎず、それが国益の増大に資するという判断に国民の過半が同意するなら、ただちに行う

    f-nyoro
    f-nyoro 2007/05/03
  • 風邪を引いたのでミステリーでも読もう - 内田樹の研究室

    また風邪を引いてしまった。げほげほ。 ほんとに蒲柳の質である。 免疫力が低下しているということであり、要するに疲れているんですね。 あまりに仕事が多いから。 新規の仕事は全部断っているのであるが、インタビューはぺらぺら話すだけで終わりだから大丈夫だろうと思って次々に引き受けてしまったが、やはりそのあとに「ゲラ」というものが来て、これを校正しなければならない。 たしかに「そういうこと」は言ったのだが、そういう文脈じゃなかったでしょ・・・とか、「そういう内容のこと」は言ったけれど、そういう言葉づかいはしてないでしょ・・・とか、いろいろ屈託がある。 あまりばっさり直すと、まとめた編集者だって「むっ」とするだろうから、できれば手を入れずに済ませたいのであるが、なかなかそうもゆかない。 これまでのベストインタビューは橋さんと大越くんのもので、これは読んだ私自身が「ウチダっておもしろい人だなあ、会っ

    f-nyoro
    f-nyoro 2007/03/21
  • ブロフェルド効果 - 内田樹の研究室

    「講演はもうやりません」と宣言したので、これが一般公開される最後の講演となった高槻のお仕事にでかける(まだあと3つ約束が残っているが、すべてクローズドのイベントである)。 主宰されたのはリゾナンスという高槻の市民団体。 京都造形大での講演で「絶句」してから、講演恐怖症となっていたが、それ以来のピンの講演である。 病み上がりで体調も思わしくないし、依然として頭がぼおっとしている。 どうもろくなことになりそうもない。 何を話すか何も決めずに(というよりは決まらずに)、よろよろと高槻まで行く。 壇上でとりあえずマイクをにぎって、適当に話を始める。 30分くらい話してネタが尽きたら、勝手に会場からの質疑応答に切り換えて1時間くらいでお茶を濁してソッコーで逃げ出そうと思って、かなり投げやりな気分で始めたのであるが、話し始めると「話しやすい」ことに気がついた。 この「話しやすい」というのはひじょうにデ

  • 内田樹の研究室: うなぎくん、小説を救う

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  • 内田樹の研究室: 死をめぐる二つの考察

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  • 内田樹の研究室: うなぎくん、小説を救う

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  • 内田樹の研究室: うなぎくん、小説を救う

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  • 内田樹の研究室: ナショナリズムと集団性

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