「脱原発」がかすみ始めた。菅直人首相の退陣が秒読みに入り、原発の維持・推進に理解を示す後継候補が増殖している。民主党代表選は、候補者の器量がB級かどうかよりも、この側面が重要だと思う。 高名な文芸評論家が「疑問だらけの菅降ろし」と題する一文を毎日新聞に寄せ、脱原発首相に対する批判勢力の言葉の貧しさを酷評した(加藤典洋、11日夕刊東京本社版)。 それによれば、いま最大の政治課題は原発である。首相は脱原発という新しい価値を明示したが、反対派は現状維持(原発推進)以外に提案がない。足りぬ電力をどうするかは経済の問題だ。反対派は真に必要な政治論戦をサボり、首相の政治努力を空洞化しようとしているにすぎない--という。 実際、後継候補たちは原発の維持に理解を示している。「原子力技術を蓄積することが現実的」(野田佳彦)、「世界最高の安全基準を策定する」(馬淵澄夫)、「短絡的な脱原発というイメージの独り歩