金沢三文豪の一人、泉鏡花(1873~1939年)の晩年の傑作といわれる「山海評判記」の草稿が泉鏡花記念館(金沢市)の調査で発見された。草稿には推敲(すいこう)の痕跡が随所に見られ、鏡花の幻想的な文章は緻密な計算のもとに書かれたことが分かった。同館の担当者は「鏡花が幻想的な文章をどのような手法で作り上げたのかを分析する上で、非常に貴重な資料だ」と指摘している。(池田創) 「山海評判記」は「時事新報」の夕刊に、1929年(昭和4年)の7月2日から11月26日に全125回にわたって掲載された。七尾市の和倉温泉を舞台にした幻想小説で、小説家の主人公が様々な怪異に遭遇するストーリーだ。 長らく鏡花の幻想小説の傑作とされてきた。さらに近年、民俗学者の柳田国男(1875~1962年)との親交の過程で執筆されたことが指摘され、関連書籍も出版されるなど再評価が進んでいる。 今回発見された草稿は計30枚。鏡花