ウイルスと聞いて思い浮かべるのはエイズやエボラ出血熱、コレラやインフルエンザなどの恐ろしい病気だ。時には急激に、時にはゆっくりと、人間の身体に深刻なダメージを与える。だが、『破壊する創造者』の著者はウイルスが存在するからこそ生物は進化すると言う。 たとえばエリシア・クロロティカ。 アメリカの東海岸に生息するこの美しい生物は、植物と動物の両方の性質を併せ持つ。幼生期に藻類を食べて葉緑体を蓄え、食べ尽くすと口を失い、その後は光合成で生きていく。変態の過程で藻類の細胞核から遺伝子を受け継ぐが、その運搬役を担うのが逆転写酵素を持つレトロウイルスだ。 驚くことに、このレトロウイルスは突如として破壊者になる。春が来るとウイルスが急増し、あらゆる組織に充満して細胞を破壊する。生きていくのに必要だったウイルスが、あらかじめプログラムされていたかのように細胞を一気に全滅させる。 進化は、自然選択や突然変異だ
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