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ブックマーク / book.asahi.com (27)

  • 三宅香帆「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」 労働観の改革、「ノイズ」が鍵|好書好日

    子どものころからが大好きな文学少女は、好きなをたくさん買うために就職した――はずが、待っていたのは「労働のせいでが読めない!」という現実だった。その体験をもとに、タイトルの「なぜ」を深掘りしたのが書だ。 最初の答えとして、日に根付く長時間労働がある。しかし、日が右肩上がりに売れた昭和後期は、エコノミックアニマルと呼ばれた日人が、全力で長時間労働にいそしんだ時代でもある。ゆえにこれは理由の全部ではない。 次に著者は問いの方向を転換する。長時間労働で疲弊する中、は読めなくても、インターネットにはハマってしまう。なぜ? 答えは、ネットでは「求めている情報だけを、ノイズが除去された状態で、読むことができる」から。対して、読書の特性とは「世界のアンコントローラブルなものを知る」こと。昔は読書による知識の吸収が成功するために必要とされていたが、今では、その知識が情報を濁らせるノイズ

    三宅香帆「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」 労働観の改革、「ノイズ」が鍵|好書好日
  • イスラエルはどうしてあんなにひどいことができるの? 早尾貴紀——後編|じんぶん堂

    記事:平凡社 パレスチナ・イスラエル問題に関するオンラインセミナー「パレスチナ連続講座」に登壇する東京経済大学教授の早尾貴紀さん 書籍情報はこちら 《前編はこちらから》 ホロコーストを経験したユダヤ人とイスラエル 「ホロコーストを経験したユダヤ人が、どうしてジェノサイドをする側になるのか」という質問をよく受けます。そのことについて、2023年に日でも公開された『6月0日 アイヒマンが処刑された日』という映画を例にお話しします。ナチスの戦犯アドルフ・アイヒマンは1960年に逮捕され、62年にイスラエルで処刑されました。映画ではその死体を焼却する炉を作る過程が描かれます。映画に登場する鉄工所の社長、作業員、臨時に雇われた少年工は、それぞれ、「イスラエル国民」を構成する3階層のユダヤ人グループに属しています。 1つめのグループは、イスラエルの建国運動を中心的に担った人たちです。ヨーロッパ出身で

    イスラエルはどうしてあんなにひどいことができるの? 早尾貴紀——後編|じんぶん堂
  • 台湾研究の第一人者の目から変革期の台湾政治を理解する 若林正丈著『台湾の半世紀』書評(評者:野嶋剛)|じんぶん堂

    記事:筑摩書房 第一人者による、体験を交えた激動の台湾史 書籍情報はこちら 優れた研究者の目を通して、台湾政治史そのものへの理解を深化させる 書の著者である若林正丈氏は名書『台湾政治――中華民国台湾化の戦後史』など、台湾政治研究において揺るがぬ金字塔を打ち立てた人物であるが、彼がどのような経緯と覚悟で、台湾研究を行なってきたのか、世代の近い研究者仲間は知っていても、二十代、三十代の若手・中堅にとっては「歴史」に類するような話で知らない人も多いはずである。 若林氏は、日社会全体が台湾に対して「不感症」ともいえる無関心を示していた時代の一九八〇年代から、党外と呼ばれる民主化運動の人々と語り合い、民主化への胎動を始めた台湾政治とともに研究者人生を歩んできた。その長期にわたる努力を詳らかにする書は、一人の優れた研究者の目を通して台湾政治史そのものへの理解を深化させる意義を持つ。 書が誕生

    台湾研究の第一人者の目から変革期の台湾政治を理解する 若林正丈著『台湾の半世紀』書評(評者:野嶋剛)|じんぶん堂
  • 世界17ヵ国で翻訳・出版の話題のバンド・デシネ『LA BOMBE 原爆』著者インタビュー【前篇】——広島への原爆投下までを克明に描く|じんぶん堂

    じんぶん堂TOP 歴史・社会 世界17ヵ国で翻訳・出版の話題のバンド・デシネ『LA BOMBE 原爆』著者インタビュー【前篇】——広島への原爆投下までを克明に描く 記事:平凡社 1945年8月6日、広島に原子爆弾が投下された。原爆ドーム(当時は広島県産業奨励館)が激しく燃え上がる。 書籍情報はこちら 『LA BOMBE 原爆』(上下巻、脚=ディディエ・アルカント、L.-F.ボレ、絵=ドゥニ・ロディエ、翻訳=大西愛子・平凡社) 日で刊行されるという意味 写真左より、脚を担当したディディエ・アルカント、L.-F.ボレ、絵を担当したドゥニ・ロディエ。 ボレの写真のみ© Fab Jouss ——この7月、日で『LA BOMBE 原爆』(上下巻)が刊行されます。日は世界で唯一の被爆国です。日で刊行されるにあたり、現在、どのようなお気持ちでしょうか。 ディディエ・アルカント(以下、アルカン

    世界17ヵ国で翻訳・出版の話題のバンド・デシネ『LA BOMBE 原爆』著者インタビュー【前篇】——広島への原爆投下までを克明に描く|じんぶん堂
  • 「進化が同性愛を用意した」書評 性行動の本来の目的を問い直す|好書好日

    「進化が同性愛を用意した」 [著]坂口菊恵 同性愛は「不自然」だと思っている人は多いかもしれない。だって子どもできないでしょ、と。 そういう人こそ書を読むべきだ。 著者がまず口酸っぱく説くのは、同性への性行動は自然界にあふれているということ。たとえば。 アフリカにすむボノボという類人猿は、メスどうしが抱き合って性器をこすりつけ合う。性行動の半分以上は同性相手だという。イルカは若いオスが口やヒレで互いの性器を愛撫(あいぶ)する。ゾウのオスも鼻や口での前戯を楽しんだ後、勃起してオスの相方にのしかかる。同性どうしで性行動をする動物は、1500種も見つかっているそうな。 歴史的には人間の同性愛も当たり前。帝政ローマの上流階級では同性婚がよくあった。中世の欧州には同性の恋人を公然と持つ君主がいた。欧州が同性愛に冷たくなったのは、当時のイスラム社会で男色が盛んで、十字軍時代に彼らを異端とみなしたがっ

    「進化が同性愛を用意した」書評 性行動の本来の目的を問い直す|好書好日
  • 重版未定本の復刊を実現、売り切った書店員の情熱:書泉グランデ・大内学さん|じんぶん堂

    記事:じんぶん堂企画室 「書泉グランデ」書店員・大内学さん 書籍情報はこちら 『中世への旅 騎士と城 』の魅力 の街・神保町に店を構える「書泉グランデ」は、1948年(昭和23年)創業の老舗書店。鉄道、アイドル、格闘技をはじめとした趣味人向けの専門性の高い書籍を網羅的に取り揃えている。 今回、重版されたのは『中世への旅 騎士と城 』(白水uブックス)(著者:ハインリヒ プレティヒャ、翻訳:平尾浩三)。中世ヨーロッパの騎士たちの日常生活などを、豊富なエピソードをまじえてわかりやすく解説している。日では1982年に翻訳刊行され、2010年に白水uブックスで復刊された。大内さんが同書に出会ったのは、中学生時代だったという。当時、初めて読んだ感想を次のように語る。 「ゲームライトノベルの多くが中世ヨーロッパの世界を下敷きにしていました。例えば、友達同士で会話しながら遊ぶボードゲーム・テーブル

    重版未定本の復刊を実現、売り切った書店員の情熱:書泉グランデ・大内学さん|じんぶん堂
  • 森の王者クマタカのすべてを解き明かす――。25年におよぶ執念の生態調査が結実!|じんぶん堂

    記事:平凡社 43日齢の雛に餌を与える雌。貴重な瞬間をとらえたダイナミックな写真が数多く掲載されているのも書の特徴(『クマタカ生態図鑑』より転載) 書籍情報はこちら クマタカが織りなす野生の世界に引きずり込まれていく 若尾親著、山﨑亨監修『クマタカ生態図鑑』。2023/3/25平凡社刊、オールカラー600ページ、ソフトカバーB5変型判(16×23.5cm)、定価8800円 大型猛禽、クマタカ。頭部の角張った冠羽、橙黄色の鋭いまなざし、深く湾曲したくちばし、がっしりとした体軀、強靭な足と鋭く湾曲した長い爪。一度出合ったら、決して忘れることのない勇壮な風貌。翼を広げると、左右の翼の端から端まで1.5 メートルほどもある。止まり場から飛び立って、ノウサギやヤマドリなどにつかみかかり、捕える。ときには、シカやキツネも襲う。その様子は豪快の一言。そんな魅力あふれる鳥が、日の森林にすんでいる。だが

    森の王者クマタカのすべてを解き明かす――。25年におよぶ執念の生態調査が結実!|じんぶん堂
  • 鈴木まもるさん「鳥は恐竜だった」インタビュー 進化のカギは「巣」にあった!?|好書好日

    鈴木まもるさん 鈴木まもる(すずき・まもる)画家、絵作家、鳥の巣研究家 1952年東京都生まれ、東京芸術大学中退。86年より伊豆半島在住。「黒ねこサンゴロウ」シリーズ(偕成社/文・竹下文子)で赤い鳥さし絵賞、『ぼくの鳥の巣絵日記』(偕成社)で講談社出版文化賞絵賞、『ニワシドリの秘密』(岩崎書店)で産経児童出版文化JR賞、『あるヘラジカの物語(あすなろ書房/原案・星野道夫)で親子で読んでほしい絵大賞を受賞。他にも『ピン・ポン・バス』(偕成社/文・竹下文子)、「せんろはつづく」シリーズ(金の星社/文・竹下文子)、『みんなあかちゃんだった』(小峰書店)など著書多数。 公式ホームページ:鳥の巣研究所 鳥の巣を造形的な視点から見る ——鳥の巣研究はいつ、どのようなきっかけで始めたのですか。 子どもの頃から動植物が好きでしたが、実際に鳥の巣を目にするようになったのは、静岡の伊豆の山で暮らし始め

    鈴木まもるさん「鳥は恐竜だった」インタビュー 進化のカギは「巣」にあった!?|好書好日
  • 学校教育に忍び寄るオカルト思想 原田実『オカルト化する日本の教育』より|じんぶん堂

    記事:筑摩書房 original image: beeboys / stock.adobe.com 書籍情報はこちら †教育現場は感動に飢えている ここ一〇年くらいの間に「江戸しぐさ」の道徳授業への導入や、親学の台頭と並行して教育現場に広まりつつあるものとして、大規模な組体操、1/2成人式、誕生学などが挙げられる。 小中高等学校の運動会などで児童・生徒たちによる組体操は、ピラミッドやタワーなどで次第にその高さを競い合う傾向があった。二〇一四年度には組体操関連で起きた事故が全国で八五九二件(独立行政法人日スポーツ振興センター調べ)に及んでいる。組体操で起きる事故の中には死者が出たり重傷者に重い後遺症が残ったりした例もある。 名古屋大学准教授の内田良の試算によると一五一人で構成される一〇段のピラミッドだと土台の中央部には一人あたり三・六人分の体重がかかる生徒がいる。中学三年男子の平均体重では

    学校教育に忍び寄るオカルト思想 原田実『オカルト化する日本の教育』より|じんぶん堂
  • なぜ「女性哲学者」は非業の死をとげたか 『ヒュパティア 後期ローマ帝国の女性知識人』|じんぶん堂

    世界で最も有名な「新プラトン主義者」の実像を描く! エドワード・J・ワッツ著『ヒュパティア 後期ローマ帝国の女性知識人』(白水社刊)は、男性社会を生きた女性数学・哲学者の評伝。「アレクサンドリアのヒュパティア」を政治社会階層・宗教と暴力との関係から解説。 書籍情報はこちら チャールズ・ウィリアム・ミッチェル《ヒュパティア》より 大斎の殺人 紀元後5世紀のローマ帝国は、市民たちが複雑な幻想を受け入れることを当てにしていた。人々は、自分たちが生きている国やその国を運営している人間には、逆らいがたい権力があるものと信じさせられていた。帝国官僚と地方エリートと教会指導者と帝国軍将校は結託して、自らが掌握した公共の秩序がいかに脆もろいものであるかを、脅迫と報酬と個人的な人脈によってひた隠しにしながら、帝国の諸都市を統御していた。エリートによる統制という幻想の維持に役立ったのはじつに些細なことで

    なぜ「女性哲学者」は非業の死をとげたか 『ヒュパティア 後期ローマ帝国の女性知識人』|じんぶん堂
  • 中村文則さん「自由思考」インタビュー 底が抜けた政治、危機感を言葉に前へ|好書好日

    『自由思考』は中村さんにとって初めてのエッセー集。2002年のデビュー以降、様々な媒体で書いてきた。東日大震災の5日後に依頼を受けた福島の地元紙・福島民報への寄稿、憲法9条について8ページに及ぶ論考など、書き下ろし3を含む111。結果的に3分の1近くを政治や社会問題がテーマの文章が占めた。 「不惑を前に僕たちは」(16年1月)は反響の大きかった朝日新聞への寄稿だ。学生時代、第2次世界大戦の日を美化する友人に異論を返すと、「お前は人権の臭いがする」と彼はひどく嫌な顔をして「俺は国がやることに反対したりしない」「国がやることに反対している奴(やつ)らの人権をなぜ国が守らなければならない?」と言ったエピソードを紹介。「人は自己を肯定するため誰かを差別し、さらに『強い政府』を求めやすい」とつづった。「強者目線でものを言う人が増えていると感じています」 毎日新聞地方版の連載「書斎のつぶやき」

    中村文則さん「自由思考」インタビュー 底が抜けた政治、危機感を言葉に前へ|好書好日
  • 「庵野秀明展」が開幕 希代の映画監督・アニメーターの全貌に迫る、初の大規模展|好書好日

    庵野秀明の軌跡を貴重な資料で 展では、庵野さんのアマチュア時代から現在までの直筆のメモやイラスト、独自の映像を作るための脚、原画、ミニチュアセットなど膨大な制作資料を見ることができます。「庵野秀明をつくったもの」「庵野秀明がつくったもの」「そして、これからつくるもの」をコンセプトに、全5章で構成されています。 会場に入ると、仮面ライダー1号のスーツを着た若かりし頃の庵野さんのパネルが。壁には自画像や、漫画家の安野モヨコさんが描いた庵野秀明像も飾られています。 50年前にタイムスリップ 第1章「原点、或いは呪縛」では、1960~70年代に放送された「仮面ライダー」「帰ってきたウルトラマン」「宇宙戦艦ヤマト」「機動戦士ガンダム」の世界が目の前に広がります。これらはすべて、庵野さんが今も愛してやまない作品です。縦3m×横15mの巨大なLEDスクリーンには、庵野さんに影響を与えた数多くの作

    「庵野秀明展」が開幕 希代の映画監督・アニメーターの全貌に迫る、初の大規模展|好書好日
  • ディーリア・オーエンズ「ザリガニの鳴くところ」 内に自然を抱えた少女の謎|好書好日

    70歳近くで初めて刊行した小説が、各国で翻訳される。華々しいデビューの裏側には、長年動物学の分野で培ってきた、自然や生き物に関する豊かな見識と観察力が発揮されている。 アメリカ南部の湿地帯にある粗末な小屋で、カイアという少女は暮らす。暴力的な夫から逃れてまず母が、そして兄弟が次々と去り、ついには父も行方知れずに。そもそも貧乏白人として村の共同体から弾かれ、就学機会すらなかったカイアには自分以外に頼れる者はない。 沼に生きる孤独な少女に、周囲の森や潟湖(せきこ)は優しい。生息する鳥の美しい羽根は無聊(ぶりょう)を慰め、肉は工夫次第で料となる。魚や貝を船の燃料代にかえるべく、商店を営む黒人夫婦に買い取ってもらうことも。 もうひとり、助けとなるのが、兄の友人だったテイトだ。彼は、カイアに文字を教えるのだ。彼女は書物によって確実に世界を広げる。が、そうした平穏をやぶる因果の種となるのも、少女の成

    ディーリア・オーエンズ「ザリガニの鳴くところ」 内に自然を抱えた少女の謎|好書好日
  • 沖縄の若者たちの「地元」、先入観なく見続けた10年の成果 打越正行さん「ヤンキーと地元」|好書好日

    文:太田明日香 写真:坂下丈太郎 打越正行(うちこし・まさゆき)社会学者 1979年生まれ。2016年、首都大学東京人文科学研究科で論文博士号(社会学)取得。特定非営利活動法人「社会理論・動態研究所」研究員、沖縄国際大学南島文化研究所・研究支援助手、琉球大学非常勤講師。2019年3月、『ヤンキーと地元』(筑摩書房)を上梓。共著に『最強の社会調査入門』(ナカニシヤ出版、2016年)など。 打越さんは大学院生のときに出会った“彼ら”を10年に渡って調査した。出会いは学生時代にまで遡る。広島出身の打越さんは数学の先生になるつもりで琉球大学に進学。学生のときにたまたま大学の駐輪場で、地元の少年たちが酒盛りをしながら同級生に高校を辞めないよう説得している場面に出くわした。それまでは学校が楽しくて、行くのは当たり前だと思っていた打越さんは、そのとき初めて「学校は一部の人のために作られた場所で、自分は無

    沖縄の若者たちの「地元」、先入観なく見続けた10年の成果 打越正行さん「ヤンキーと地元」|好書好日
  • 「産業革命は黒人奴隷たちの血と汗の結晶である」 歴史学の常識を覆した研究者とは 川北稔さんが解説|じんぶん堂

    記事:筑摩書房 iStock.com/vivalapenler 書籍情報はこちら 「周辺」から世界の歴史を見る 植民地など、「周辺」とされる地域から世界の歴史をみようとする立場は、いわゆる世界システム論をはじめとして、いまではそれほど珍しくはない。そうした見方は、学問的にも市民権を得ているといえる。しかし、ほんの半世紀まえには、そうした立場は、まともな学問とはみられないものでもあった。先頭を切って、この困難な局面を切り開いたひとりが、書の著者エリック・ウィリアムズである。 トリニダード・トバゴの郵便局員の息子として生まれたウィリアムズは、秀才の誉れ高く、周りの期待を背負って、宗主国イギリスのオックスフォード大学に送りこまれた。古典学を専攻した彼は、抜群の成績で卒業したものの、当時のイギリスには─―というより、日をふくむ世界には─―、西洋文明の根源にかかわる古典学、つまりギリシア語やラテ

    「産業革命は黒人奴隷たちの血と汗の結晶である」 歴史学の常識を覆した研究者とは 川北稔さんが解説|じんぶん堂
  • 「育ちすぎたタケノコでメンマを作ってみた。」玉置標本さんと河原をゆく 採集できた食べ物は・・・?|好書好日

    文:加賀直樹、写真:加藤梢 玉置標(たまおき・ひょうほん) 1976年、埼玉県生まれ。大学時代を山形県で過ごし、東京のウェブ制作会社に勤めた後、30歳でフリーライターに転身。趣味は自然の中や家庭菜園からの物調達全般で、採ったり育てたりした材の記録を「標」している。最近は昭和の家庭用製麺機を使った麺づくりが趣味で、同人誌趣味の製麺」シリーズの編集長を務める。 まずは桑の実(マルベリー)を採集、実 ――今にも雨の降り出しそうな空。降られなきゃ良いけれど……。川べりに到着しました。鳥が鳴いています。土手には、約3メートルの大木が。何の木だろう。 これは桑の木です。そしてこれが桑の実。2センチぐらいの大きさで、真っ黒になっていますよね。これぐらい真っ黒に色が変われば美味しいんです。 ――どんな味がするんだろう。 べてみます? ――そのまま生でべちゃうんですか。 ちょっとザルを持って

    「育ちすぎたタケノコでメンマを作ってみた。」玉置標本さんと河原をゆく 採集できた食べ物は・・・?|好書好日
  • 中国発の本格SF「三体」劉慈欣さんインタビュー 科学の力、人類の英知を信じて執筆|好書好日

    文・写真:延与光貞(朝日新聞中国総局) 劉慈欣(りゅう・じきん)作家 1963年、中国・山西省生まれ。発電所でエンジニアとして働くかたわら、SF短篇を書き始め、雑誌〈科幻世界〉に『三体』を連載。2008年に単行として刊行。「三体」「黒暗森林」「死神永生」の三部作は2100万部を超す売り上げを記録している。2015年、英訳版がアジア人作家して初めて、SF界最大の賞・ヒューゴー賞を受けた。 文化大革命(1966~76年)で父を亡くしたエリート女性科学者は、失意の日々を送るなか、謎めいた軍事基地にスカウトされる。そこで行われていたのは、人類の未来を左右しかねない極秘プロジェクトだった。彼女が宇宙に向けて発信した電波は、惑星「三体」の異星人に届き、数十年後、科学的にありえない怪現象が人類を襲う。壮大な「三体」三部作の第1弾。 SFは異文化間で共鳴しやすい 小説のアイデアは、物理学の難問「三体問題

    中国発の本格SF「三体」劉慈欣さんインタビュー 科学の力、人類の英知を信じて執筆|好書好日
  • 『創造された「故郷」』 土地の歴史と「意味」あぶり出す|好書好日

    創造された「故郷」 ケーニヒスベルクからカリーニングラードへ 著者:橋伸也 出版社:岩波書店 ジャンル:歴史・地理・民俗 創造された「故郷」 ケーニヒスベルクからカリーニングラードへ [著]ユーリー・コスチャショーフ 土地には「意味」の地層がある。人々がそこで生きる「意味」の地盤を、どの歴史の地層に求めるか。それは、土地における支配と服従の根拠にも関わり、否応なく政治問題化する。 書の舞台は、スターリンの盟友という以上に「縁もゆかりもない」カリーニンの名を冠した市と州である。NATOに対する軍事的なくさびとしても意味のある、ロシアの飛び地だ。 しかし、市の前身は、哲学者カントの街、ケーニヒスベルク。州の前身は、近代ドイツを牽引し明治日のモデルとなったプロイセン王国の故地、東プロイセンである。スラブ民族たるロシア人が住んでいるのは、戦勝国ソ連がドイツ人住民を追い出した結果だ。 ところが

    『創造された「故郷」』 土地の歴史と「意味」あぶり出す|好書好日
    fumirui
    fumirui 2019/04/07
  • シゴト集「おいしいデ」梅原真さんインタビュー 絶体絶命のデザインとは|好書好日

    文:浜田奈美、写真:石川拓也 梅原真(うめばら・まこと)デザイナー 1950年高知市生まれ。大学卒業後、高知のテレビ局関連会社に就職。29歳で退職し、憧れのスペインアメリカを放浪。80年に「梅原デザイン事務所」をスタート。砂浜をミュージアムに見立てた黒潮町の「砂浜美術館」や、四万十川流域の活性化を目指した「四万十ドラマ」をプロデュースするなど高知に根ざした仕事を続けつつ、秋田県のスーパーバイザーを務めるなど県外でも活躍。16年毎日デザイン賞・特別賞受賞。武蔵野美術大学客員教授。高知県香美市土佐山田町在住。 絶体絶命の状況をデザインで「逆にしたるわい」 ――ぶた、きびなご、たまごに納豆、ももにマッシュルームと、『おいしいデ』を読むと、梅原さんが実にたくさんの一次産業の生産者とシゴトをしてきたかがわかります。その冒頭で、四万十川流域で放置されていた栗山に手を入れ、再生した「しまんとジグリ」の

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  • 日本SF大賞2度受賞の作家が生み出した〝レイゴウキン〟とは 飛浩隆さん8千字インタビュー|好書好日

    はるかなる未来――。「特種楽器」の技芸士トロムボノクは、特異体質の美少年シェリュバンと一緒に宇宙を旅している。2人は老商人に誘われ、ある惑星へ。そこでは、およそ70万個の鐘を1千人の奏者が鳴らす巨大なカリヨン(組み鐘)が「埋蔵楽器」として眠り、首都の開府500年を記念して、今しも打ち鳴らされようとしていた……。 ――『零號琴』の構想は初めての長編『グラン・ヴァカンス』(2002年)の刊行前からあったそうですね。いつごろからだったのでしょうか。 正確な時期は覚えていないです。すでに消えてしまった高度な文明があって、それがあちこちの星に楽器をたくさん残していて。ぼんやりとしたイメージでは、建物大の変な楽器がたくさんある。パイプオルガンみたいなものとか、いろんな変な音が出るものがたくさんあり、それを修理して回る主人公と、お話をかき乱す相棒がいて……みたいな感じになれば楽しいだろうなという、その程

    日本SF大賞2度受賞の作家が生み出した〝レイゴウキン〟とは 飛浩隆さん8千字インタビュー|好書好日