プロ経営者、と呼ばれる人がいる。 内部昇格ではなく、外部からの招聘によって企業のトップに就任する。しがらみにとらわれず改革を断行し、人員整理をすることができる。ドライな欧米流という印象が強く、日本の風土にはなじまないとする意見も多いけれども、じつを言うと、四百年前の日本にもそういう人がいて、しかも結果を出したのである。 その名を、河村瑞賢(ずいけん)という。デビュー十周年をむかえる伊東潤の新刊は、その生涯を描いた歴史小説だ。 河村瑞賢(本書では「河村屋七兵衛」)は、もともと材木商だった。 かの江戸中を灰にした明暦の大火が起きたとき、誰よりも早く木曽へ行って、ごっそりと木材を買い入れて復興特需で富を築いた。ただしこの商売はきわめて清潔におこなわれたし、富は庶民に還元されたため、結果として最高の社会奉仕となったのである。徳川幕府および諸大名は、これで瑞賢に注目した。当時の日本は幕府発足後約六十