養生の術は、つとむべき事をつとめて、身をうごかし、気をめぐらすをよしとす。つとむべき事をつとめずして、臥す事をこのみ、身をやすめ、おこたりて動かざるは、甚だ養生に害あり。久しく安座し、身をうごかさざれば、元気めぐらず、食気とどこほりて、病おこる。 おそらく、『養生訓』の中でいちばん多く使われている語句といえば、「気をめぐらす」という語句であろう。益軒は口ぐせのように、「気をめぐらし」「元気をめぐらし」「血気をめぐらし」といっている。気をふさぎ、気をとどこおらせてはいきない。そのためには、休んだり眠り過ぎたり、じっとしていてはいけない。「手足をはたらかし」「身をうごかし」て、気をめぐらさなければいけない。 この気[元気]こそ、「人身の根本」「生の源」「命の主」であるから、養生はこの気をたもちめぐらすことにある、と益軒はいう。 こんにちの私たちに馴染み深い解剖生理学に基づく近代西洋医学の人体観