秋田の過疎地に鳴り響く、祈りにも似たルーツ・ロック・レゲエ――英心&The Meditationalies 取材・文/大石始 写真/ケイコ・K・オオイシ 2017年1月、僕らは秋田県山本郡三種町鹿渡にいた。JR秋田駅から奥羽本線に乗り換えて40分ほど。海まではさほど離れていないため、他の豪雪地帯に比べれば降雪量自体はそれほど多くないものの、曇り空の下を吹き抜ける北風は震えるほど冷たい。駅を降りて周囲を見回すと、歩いている人はおろか、一台の車すら走っていない。 この鹿渡に、松庵寺という古刹が建っている。創建は天文年間(1532~54年)。かの紀行作家・菅江真澄も訪れたという由緒正しい寺だ。 英心くんは、ここで副住職を務めながら、マイペースな音楽活動を続けている。僕が彼と知り合ったのはコロリダスという陽気な南国音楽楽団の打楽器奏者としてだったが、のちに地元の仲間たちと英心 & The Medi