『うめのこと葉』という和本の歌集で、賀茂真淵という国学者が編み、江戸時代後期の文政7年(1824)に、その孫弟子である大石千引の序文を付して出版されたものです。これ自体は特に珍書というわけではありませんが、注目したいのは、この本をかつて所蔵していた人物が押した印鑑、すなわち蔵書印です。 この本には、写真のように「進木廼舎」という文字が記された蔵書印が押されています。印の大きさは3.3×3.3センチ。この上から重ねて「原氏記」という印も押されています。 この本を買ったのは、まさに偶然でした。 私は、半ば趣味、半ばストレス発散のために、神田神保町の古書即売市に時々行くのですが、私が別の本を手に取ってレジに並ぼうとしていたところ、蔵書印にたいへん詳しい方がちょうどそこに居合わせ、 「青山君、森鴎外の旧蔵書があったよ」 とわざわざ私に声を掛けて、親切にもこの本を手渡して下さったのでした。 私は