慶應義塾大学 村田 真 1. はじめに 紙の印刷物を読むことを困難にする障害をプリントディスアビリティという。視覚障害や学習障害はこれに含まれる。 プリントディスアビリティを抱えた人に紙の書籍は読めないが、電子書籍は読める可能性がある。電子書籍なら、その人の特性に応じたやり方で情報を提示することができる。例えば、文字の大きさを変える、色を変える、音声で読み上げることができる。情報の提示方法を工夫すれば読めなかったものが読めるようになることはDAISY教科書などのプロジェクトによって実証されてきた。 アクセシブルな電子書籍によってプリントディスアビリティに対処することは、社会的合意となりつつある。EUが公布したEuropean Accessibility Act(2019)は電子書籍・電子書籍リーダ・電子書店がプリントディスアビリティに対処することを義務付けている。日本の読書バリアフリー法(