草片文庫(くさびらぶんこ) 奇妙な物語です。縦書きでお読みください。 ここに一人の男がいる。もう四十になる。保健所につとめていて、大学の時の専門は栄養学である。人が一生の間に、どのくらいの水分、糖分、タンパク質、脂質を摂取するか、長寿と短命の人ではどう違うのかを、厚生省の白書の統計値をよりどころとして計算した。 単純に水分、糖分などといっても、摂取の仕方、摂取した人の体質、生活環境、もろもろの条件で影響は違ってくるし、単純な総量でものを見ても、必ずしも正しくはない。本人もそれは重々承知している。 なぜ摂取の総量という単純な計算で比較したのかというと、大学の酒の席で、誰かが、俺は分解酵素がないから、一生涯アルコールは飲まないな。といったのにたいして、俺は一日、ウイスキーをダブルで十杯だ、一生にすると、どのくらいになる、といったことが頭に残っていたからだ。 自分は酒をどのくらい飲むだろう、高校