中国の各省のなかでも、内陸部の江西省は影が薄い。面積・人口・経済のいずれも、中国の各地方のなかでは「中の中」か「中の下」。歴史の古い地域ではあるが、一般的な日本人が知っているほどの有名な出来事の舞台にはなっていない。名物は辛い料理とはいえ、世界的にも有名な四川料理や、毛沢東が好んだ湖南料理と比べると、やはり知名度は低い。 そんな江西省の略称は「贛」(かん)。その名前を冠しているのが、省内の最南部に位置する贛州市だ。山がちな場所であり、これまたマイナーな街なのだが、実は恐竜化石の話題については非常に熱い場所だ。中国でも有数の「地味省」の、さらに地味な街が、意外な分野で輝いているのである。今回と次回の2回にわたり、紹介していこう。 タマゴを抱くオヴィラプトルまずは、最近話題になった発見を取り上げておくべきだろう。2020年12月、雲南大学古生物研究院の畢順東(Bi Shundong)らが、中国
