アルプスの南麓、マッジョーレ湖畔にある南スイスの観光地アスコナに、「モンテ・ヴェリタ」(真理の山)と名付けられた丘がある。ここはかつて、スイスの心理学者であるカール・ユングや、ドイツ文学の作家ヘルマン・ヘッセなどの個性的な人物が集い、近代が生み出した矛盾を乗り越えるために交流した場所である。 私はこの歴史的な場所に招待され、「地球環境変動と生物多様性」についての国際会議に参加し、世界各国の研究者と議論を交わす機会を得た。この経験をもとに、モンテ・ヴェリタに集った先人たちの足跡をたどりながら、自由な近代社会を生きる意味と、そこで自然が果たす役割について考えてみたい。 はじまりは菜食主義者のコロニーだった 歴史上の偉人とも言える多彩な知識人たちはなぜモンテ・ヴェリタに集まったのか。 モンテ・ヴェリタは、スイス・イタリアの国境に位置するマッジョーレ湖を南に見下ろす小高い丘にある。丘の上には、19