今も記憶に新しい「アメリカ同時多発テロ事件(9・11テロ)」から10年。節目となる2011年にベルリンでは多数の9・11テロに関連する展覧会が開催されている。多くの展覧会が直接「テロ」や「戦争」や「暴力」を扱い、テロに傷ついた人々の痛ましい姿や暴力によって荒廃する社会を表すなかで、ノイエ・ナショナルギャラリーで開催されたタリン・サイモンの個展は全く別の観点を写し出していた。そこでは「テロ」などを直接扱わなかったにも関わらず、9・11テロ以降に向き合うべきものを考えさせる印象深い展示となっていた。 モダニズム建築の巨匠であるミース・ファン・デル・ローエの代表作の一つであるノイエ・ナショナルギャラリー。ガラスで覆われた四角形の広大な空間には外部へと拡張するような圧倒的な展示空間が広がる。しかしタリン・サイモンの新作「虐げられた人々」(原題:A Living Man Declared Dead