実家に帰って、本棚を整理した。たくさん本を捨てた。 書棚にならべていた本って、何だったのだろう。 ぼくはからっぽだなあ、と思った。 オレ…は… 僕は…… 空っぽ…だ… 押見修造「惡の華」 こどものころは、何にでもなれるような気がした。 高校生くらいになると、だんだん選択肢が狭まってきて、それがとてもつらかった。 30歳もすぎれば選択肢なんてないも同然で、でも、そのことについて特別な感情をもったりはしない。すでに「なる」ことをあきらめているからだ。 ぼくは〔…〕なにものかになってやろう、と思っている者だ。しかしぼくがなにになれると言うのか。 中上健次「十九歳の地図」 今年36歳になる。 何者でもない。これから何者にもなりようがない。 それでも、なのか、だからこそ、なのか これからどんなふうになっていくのかなと、たのしみな気持ちが、確かにある。 十三歳の少年なんて、ほんとうはもう何でもわかって