本書の初版は1944年である。それから65年たっても原著がまだ(3種類も)カタログに存在し、日本語訳もこうして新版が出るのは、もはや古典としての地位を確立したからだろう。原著はアメリカで100万部近いベストセラーになったが、書評で取り上げたのはAERだけだった。本書によってハイエクは「資本家を擁護する保守反動」というレッテルを貼られてしまい、のちのち本書の出版を後悔することになる。 本書をいま読むと、当時なぜそれほど悪評高かったのか、理解に苦しむだろう。「社会主義は破綻する」とか「財産権が自由な社会の基礎だ」といった、当たり前のことばかり書かれているからだ。しかし本書が出版されたころ、日本では軍国主義が猛威を振るい、欧米でも社会主義が未来の経済システムとみなされ、ケインズの「修正資本主義」が賞賛されていたことを忘れてはならない。当時ハイエクは、たった一人でこうした計画主義と闘ったのだ。