煉瓦造りの図書館旧館は、1世紀以上にわたって義塾関係者に親しまれ、慶應義塾を象徴する建造物としてしばしばメディアでも紹介されてきた。重要文化財にも指定されているこの歴史的建物を後世に残すため、2017年に始まった改修工事が「令和」に改元された2019年5月末に完了した。変わらぬ姿で次の1世紀も慶應義塾の歩みを伝え、その理念を発信していく場となることだろう。 1905年、気鋭の社会学教授・田中一貞が慶應義塾初代図書館監督(館長)に就任した。その頃から義塾の学術を支える本格的な図書館をつくろうという機運が高まっていく。海外の大学図書館事情にも通じていた田中はある講演で「図書館建築で最も留意すべきこと」として、防火、経済(効率的な書籍保存)、将来への拡張計画(増築など)の3つを挙げている。 1906年に慶應義塾創立50年を記念した図書館の建設計画が決まり、資金を広く募集した。寄付はすぐに目標額3