これは基礎科学の擁護に関する基本的な文献の一つと言っていいだろう。ちょっと読んでみたので軽く紹介する。私自身の関心は次のような点だ。基礎科学の成果はその性格からして、未知のものである以上、それが産業に応用可能か、どうか、ということは基本的に知りえないことである。第一に、この時点で、ブッシュはいったいどんな論理を用いて、基礎科学の有用性を主張したのか、ということ。第二に、その上で、彼はどういう論理を用いて、国家による基礎科学支援を正当化したのか、ということである。 ブッシュは、アメリカの電気工学者で、重要な科学技術行政家。科学技術における政治家みたいな役割を果たした人物である。1944年の11月にローズベルト大統領が当時、OSRD(Office of Scientific Research and Development)の長官だったブッシュに、戦争終結をにらんで、戦時中の科学研究の成果の普