もうひとつ、わたしが、いつまでも忘れられない別れの思い出があります。 あれは、何歳くらいの時でしょうか。たぶん、小学校三年生か四年生くらいのことだったと思います。 ある夕方、わたしは、父と兄の三人でジグソーパズルをしていました。そのころは、ジグソーパズルがとてもはやっていて、我が家でも、わりと大きなピース数の多いジグソーパズルを作ることが、家庭内での娯楽のひとつになっていました。ジグソーパズルって、一回完成させたら、またぐちゃぐちゃにして、もう一度並べなおしたりできるので、貧しい我が家にはもってこいの娯楽だったように思います。完成したパズルを額に入れて飾ろうとか、コレクションしようとか、そういうプチブル的な発想は、まったくありませんでした。できあがっては、またぐちゃぐちゃにし、また作っては、つながったピースを元の一片のピースに戻す、そんなシーシュポスみたいなことをして、繰り返し遊んでいた