読書の秋とはよく言ったもので、この時期になるといつも、お気に入りの小説や詩を再び読み返したくなるから不思議。 今私が再読している小説には、秋にぴったりなロマンチックな詩が引用されています。 九月が、彼女の月がきた 彼女のうちに息づく生命は、 この月にこそ弾む 彼女は葉を落とした木々を、 炉に燃える火を愛する。 だからぼくは一年のうちで、 この九月と十月とを 彼女に帰するのだ ぼくの一年のすべての日々は彼女のもの 彼女はその多くの日々を すでにぼくにとって耐えがたくし あるいは謎多きものとしているが それよりもはるかに数多くの日々を、 えもいわず、幸せなものとしてくれている。 彼女はぼくの毎日に一抹の香りをのこし、 ぼくがめぐらした壁には 彼女の影が軽やかにおどっている。 彼女の丈なす髪は、 ぼくのすべての滝にまつわり ロンドンのすべての街路は、 思い出のくちづけをちりばめている。 (中村妙