◆『我が詩的自伝』吉増剛造・著(講談社現代新書/税抜き900円) 「今夜、きみ/スポーツ・カーに乗って/流星を正面から/顔に刺青できるか、きみは!」と初期詩編「燃える」で謳(うた)ったのが詩人の吉増(よします)剛造。現代詩のスターで、つねに我が身を、表現世界と向き合わせ、時代を切り拓(ひら)いてきた。 語りによる『我が詩的自伝』は、1939年生まれによる戦時下の体験から始まり、現在に至る内面の動きを映し出す。「青虫みたいにして受動的統合失調症と引きこもりが専門」の青年が、同時代の表現者たちと出会い、揉(も)まれ合い、吉増剛造を作ってきた。 著者の姿勢は、頻出する「非常時」という言葉で要約される。「死ぬか生きるかで書いてたもん」。詩は「すなわち、非常時そのものだった」というふうに。あるいは「キーパーソン」。岡田隆彦、島尾ミホ、中上健次、メカス、安原顯(けん)などが続々登場、詩人を螺旋(らせん