「私は誰なんでしょうか」 琉球大学での集中講義の初日、講師であるはずの私はスーツ姿で教室の前のドアから登場することなく、Tシャツとジーンズ姿で教室の一番後ろの席にすでに座っていた。しばらくして、隣に座っていた女性の学生に話しかけた。 「ここ、集中講義の教室でいいんですよね」 彼女は笑顔で間違いないと答えてくれた。 気を良くした私は彼女にもう少し話しかけた。 「この先生って、どんな人なんですか?」 彼女は、全然知らないと返してくれた。 クリスマスにわざわざ講義をするくらいだから、簡単に単位をくれれば良いのになどと二人で笑い合った。 講義時間になっても講師はいっこうに教卓の前に姿を現さない。二人は「遅いですね~」と微笑み合っていた。 なんだか、自分以外の誰かが講義をしにやって来るのではないかとさえ思っていた。 *** しばらくして、私はゆっくりと教室の前に向かう。 そして、おもむろに教卓の前で