息子が昨日やってきて、あれやこれやとどうでもいい話をする。 つい先日来たときは、仕事でこういうことをやっていて、こういうふうにうまくいって褒められてと、得意げだった。 私はもっと詳細に知りたいのをぐっとこらえ、ただ、相槌をうつ。 映画の予告のように、ハイライトのいいところだけ、見せてくれればいい。 溌剌としているのを眺めているだけで心が潤う。 それが昨日はやたら喋る。 会社のことではない。 今住んでいるマンションのクローゼットから変な匂いがする、甘ったるい苦手な匂い。それが自分の洋服に染みつくのではないか、ハンガーにまで染み付いてとれなくなりはしないか。 いいところがあったら引っ越そうと思う。今のところは失敗だったかもしれない。急ぎ過ぎたか。 どうでもいい話だが本人は大真面目なのでやはり、相槌を打つ。 「ああ、俺さ。一人暮らししてみてわかった。俺って一人じゃ生きていけない人間なんだ。こんな