世界の中の柳田国男 [編]R・A・モース、赤坂憲雄 編者のR・A・モースらは、柳田国男を「知の巨人の一人」と評する。その存在と学問研究は単に日本だけの遺産ではなく、世界的な意味を持つというのが本書の訴えである。11人の外国人研究者、2人の日本人研究者がそれぞれの角度からその実像を描きだす。礼賛・称揚に傾かず、短所や限界まで具体的に抽出しているので、改めて我々の柳田像を見直すことになる。 膨大な著述、独自のフィールドワークと口承重視の研究、同時にその経歴は多様だが国家が押しつけるナショナリズムとは一線を画したとの論点、視点が示される。 とくに1920年代初頭に国際連盟の委員としてジュネーブに滞在するのだが、そこで柳田の学識は広まったとの見方、『桃太郎の誕生』ではヨーロッパと日本の物語の関係性に注目したという。比較研究中心のヨーロッパ流フォークロア(民俗学)との決別、それ自体は「西洋への反逆」