◇「遺伝子引き継ぐ」 今年2月2日、横浜市の病院で新しい命が誕生した。森本睦子さん(33)は長女誕生の喜びをかみしめながら、「はやぶさの帰還に立ち会える」と思った。出産が4日以降になると、4月からの保育園入園に間に合わず、復職できない可能性があった。 森本さんは宇宙航空研究開発機構(JAXA)に在籍する任期付きの研究者だ。はやぶさの後継機を研究する。森本さんの研究人生は、いつもはやぶさとともにあった。 「飛行機が飛ぶ理由を知りたい」と、大阪府立大工学部航空宇宙工学科に進学。大学では、探査機の運航に使う軌道計算の面白さのとりこになった。メーカーに就職したが宇宙をあきらめきれず、退職して大学院博士課程に入り直した。新しい拠点は、はやぶさを開発・運用する文部科学省宇宙科学研究所(宇宙研、現JAXA)。はやぶさが打ち上げられる1カ月前のことだった。 博士論文の研究のかたわら、はやぶさの運用を手伝い