一面、雪に覆われた土地。ところどころにある枯れた雑草は、人の背丈を超えるものもある。12年前、この場所には田中一正さん(52)の自宅があった。自宅の裏には牛舎があり、40頭の牛を飼い生計を立てていた。 東京電力福島第一原発の事故のあと、帰還困難区域に指定された福島県飯舘村の長泥地区。事故から12年が経とうとするいまも、田中さんは自宅に戻ることができていない。 田中さんは、除染が完了し、安全な食品を作れる環境にならなければ酪農を再開しないと決めている。しかし、「完全な除染は求めない」という村の方針などによって、その望みは遂げられそうにない状況に陥っているのだ。 「原発ごときに人生を狂わされてたまるか」 自宅を奪われた悔しさを抱えながら、奮闘を続けてきた田中さんの12年を記者が追った。 (テレビ朝日報道局 笠井理沙) ■一から築き上げた飯舘の牧場 原発事故で「夢の跡」に 東京出身の田中さんは、